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スペシャル

レポート/群馬AIRアートプロジェクト「ラーニングプログラム」山本愛子 NATURE COLOR PICNIC in 原美術館ARC

若手アーティストが群馬県内に滞在しながら、制作活動やラーニングプログラムなどを行う「群馬AIRアートプロジェクト」。その一貫として、美術家 山本愛子氏によるワークショップ「Nature Color Picnic」を当館にて開催いたしました。

山本氏は絹布、繭糸、天然染料などの自然素材や廃材を用いて、そのものが持つ土着性や記憶の在り処を主題とした作品を制作する、今、注目のアーティストです。
今回のプログラムでは、山本氏が榛名湖や桐生のレジデンスに滞在中、さまざまな分野の専門家の協力のもと、自ら採集した群馬に自生する植物や、伊香保の温泉水を準備し、参加者と一緒に、当館の解放的な空間の中で五感をフル活用しながら布を染めるという体験型のプログラムでした。

まずは、染料となる植物の色彩や形状、手触りを観察しながら、グループごとに協力してそれを細かく刻みます。今回作ったのは、「ドングリとヤシャブシ」「コセンダングサ」「マツカゼソウ」の3種類の染料です。

次に細かくカットした植物をそれぞれの鍋に入れて煮だしてゆきます。参加者は3つの鍋から立ち上る香りを確認。見慣れたはずのどんぐりや野草から思いがけないよい香りが。


染料を煮出している間に、ビー玉や、小石などを使って、「絞り染め」に使う布を準備します。参加者は各々、山本氏のアドバイスに真剣に耳を傾けながらも、かたわらの木々を揺らして渡る風を感じたり、仕上がりを想像したりしながら、真剣に制作していました。


自然の色が抽出された3種類の鍋は、香りだけでなく、色も赤褐色、暗褐色、黄色とそれぞれ。絞り終わった布をお好みの鍋に投入します。
あとは自然の力任せ。待っている間は、山本氏が持参してくださった群馬県桐生市の「梅田茶」をいただきながら、山本氏のこれまでの活動についてのお話を聞きました。まさに見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わうの五感をフル活用しながら、自然とともに作品作りを楽しみます。

十分煮込んだら、鍋から布を取り出し媒染液へ。染料だけでなくこの媒染液で、色の仕上がりが変わります。今回、山本氏が用意した媒染液は「鉄」「伊香保温泉」「銅」の3種類です。参加者からは「せっかくなら原美術館ARCの近くにある伊香保温泉を使いたい」といったようなお声も…
最後に、布を水で洗って、絞りの道具を取り外し、ビー玉や小石を中から取り出して完成です。布を広げるのは、緊張の一瞬。

カラフルで綺麗に染め上がりました。今回はひとり2枚の作成。1枚は持ち帰り、残るもう1枚は、山本氏が各地で手掛ける「Nature Color Picnic」のワークショップで集めた布として、繋ぎ合わされ、やがて1枚の作品となる予定だそうです。

朝から雨模様だった空も作品の完成を待っていたかのように秋晴れの空へ。

まるでピクニックのような、ゆるやかで楽しいひとときでした。

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開催概要
日時:2023年9月30日(土) 13:30-15:30
会場:原美術館ARC 回廊スペース
主催:公益財団法人群馬県教育文化事業団、群馬県、原美術館ARC
後援:群馬県教育委員会
対象年齢:小学生以上(低学年保護者同伴)
定員:15名 参加費:無料(原美術館ARCの入館料を含む)
講師:山本愛子