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スペシャル

原美術館

Meet the Artist:リー・キット 2018/9/16

リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」展関連イベントの模様をレポートします

展覧会初日の2018年9月16日[日]2:00 pmより、原美術館ザ・ホールで「Meet the Artist:リー・キット」を開催しました。ほぼ満席の会場で参加者の皆さんが熱心に聴講しました。

本展開催にあたり、リーは約10日間続けて原美術館に通い、一日6~7時間ほど滞在しました。館内を歩いて空間と向き合い、その場で映像を撮り足して編集し絵画を仕上げ、という作業を交えつつ、ほぼ一人で展示を完成させていきました。

インスタレーションの展示期間と言えば大抵、作家と大勢のスタッフが共に展示を仕上げていくのに対し、今回は一人で作業するリーをオフィスからそっと見守り、時々差し入れをしたり会話を交わしたり、という当館学芸チームにとって珍しいかたちでした。

トークが和やかに始まって数分後、無事初日を迎えてほっとしたのか、リーが注文した白ワインがカフェから運ばれてきて、お客様の笑いを誘う一幕も。気取りの無いリーらしい場面です。

さて、この展覧会がほぼ窓からの自然光とプロジェクターの光のみでライティングされていることにお気づきになりましたか?つまり天候や時間帯による光の変化に伴い、常に見え方が変化することになります。

リーはスポットライトを好まず、「ある時、プロジェクターの光でライティングする手法に偶然行き着いた。プロジェクターの光だと全てを照らすことができず、空間に変化が生じる。そこが好きだ」「美術も人生も人間的で自然な状態がいい、管理されコントロールされた状態を避けたい」と語りました。

「原美術館は東京で一番好きな美術館」だという理由として、窓から自然光が入るために時間によって光の状態が異なること、建物に孤独で控えめな人格のようなものを感じたこと、それが東京という街に共通する印象だったことを挙げています。

映像作品に言葉が添えられていることについては、視覚的な美しさに物語性と重みを加え、意味に広がりを持たせることができ、「本当の意味は人に伝えることができないが、言葉には二重三重の意味を持たせることができる」と。

作品は「trigger(誘因、引き金)」であり、「人が何かに気づくきっかけとなるもの」だというリーの言葉は、本展鑑賞のポイントと言えるでしょう。ぜひ、作品そのものだけでなく、窓からの光やあなた自身の影、聴こえてくる音やさりげなく置かれた日用品を含めて、空間全体を味わってみると、作家の表現したかったものが見えてくることと思います。ご来館をお待ちしています。

原美術館での展示 撮影:武藤滋生 ⓒ Lee Kit, courtesy the artist and ShugoArts

11月中旬以降、リー・キットのインタビューを含む本展図録を発行予定です。